2011年3月2日水曜日

堺2区生物共生型護岸

堺市の大阪湾岸の埋立地「堺2区」というところに、生物共生型護岸というものが2009年12月に設置されました。たったの90mしかないこの人工海岸に、少しずつ生き物が戻ってきています。

この場所は、大和川の河口にあり、お世辞にもきれいとは言い難いところ。夏場は水は茶色に濁り、ごみの量も想像以上です。でも、海の生き物たちの強いところは、幼生たちが潮の流れに乗ってどんどん流れてくることです。石はあっという間にフジツボに覆われ、汽水域に生息するコウロエンカワヒバリガイやマガキなどの貝類も付着し始めました。人工干潟の砂の中にはまだ目につく生き物はいませんが、砂に混ざっていた貝殻はすでにヤドカリたちが利用しています。

人間にとって汚く感じる水でも、生き物たちにとっては栄養豊富と言えます。ゴミがあろうとなかろうと、生き物が育つためには大したことではありません。ただ、コンクリートや人工的な砂地には、生き物たちが着生しにくく、どうしても単調な生物相になってしまいます。

泉南の方の、水もきれいで生き物も豊富な海岸と比べると、生き物の種類数も多様性もずいぶん見劣りします。でも、都会の中の「生き物はいない汚い海」と思われている場所だからこそ、私たちが自然観察会をする意義があると考えています。濁った水やゴミだらけの海岸でも、こんなにたくさんの生き物たちがすみついているということを知ってもらい、その生き物たちの生活様式は、知れば知るほどおもしろいということに気づいてもらおうと思います。

その近くに住んでいる人たちが、そんな健気な生きものたちに感動し、愛着を持ってもらえたら、きっと海に対する見方が変わると思います。水の濁りもたくさんのゴミも、自分たち人間がもとになっていることを思い出せれば、水の流し方、ゴミの捨て方も変化すると思います。

3月21日(月祝)に、一般公開の自然観察会を初めて実施します。
http://www.nature.or.jp/h_tkan/sakai2ku.htm


この堺2区の生物共生型護岸は、3年間の期限付きの実験施設です。この護岸にどのように生物が戻ってくるかを調査するだけではなく、その海岸で市民が海と触れ合う場をどのように作っていけるかという実験でもあります。この自然観察会に、たくさんの方に参加していただくことが成果となり、生物共生型護岸が各地に広まっていくきっかけになるかもしれません。

川の三面張りが、どんどん自然共生型の川岸に変化しています。海辺も、どんどん変えていきたい。そうして、都会の人が海と触れあえる場所が増え、海の恵みを実感できるような生活が戻ってきたら、いつかその海は「里海」と呼ばれるものになるのだと思います。それが私たちの夢です。

初めての自然観察会がいいお天気に恵まれますように。

2 件のコメント:

  1.  頑張ってるねえ。たくさん人が集まると良いねえ。しかし入りきれない細さですねえ。高田

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  2. 高田さん、コメントありがとうございます。やっぱりこうして発信すること大切だと思いましたし、反応があってとてもうれしいです。
    ひな段のようになっていて、観察会の時は2段目まで干上がる予定です。でも確かに狭いですよ。逆に、普段は1段目も水没していて、降りることすらできません。

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