2011年3月31日木曜日

海のふしぎ観察会


 1996年にスタートした私たちのボランティアグループ「海の観察会」は、毎年35回の海辺の自然観察会を開催してきました。15年前の10月に開催した第1回は和歌山市の加太海岸城ヶ崎。これまで各地で約60回の観察会をしましたが、そのうち城ヶ崎は20回ほどで最もよく通ったフィールドです。

 城ヶ崎は「大阪湾の出口を出てすぐのところ」という感じですが、その生物相の豊かさは湾内とは比べ物にならないほどだそうです。先週行われた海岸生物調査では70種以上の海藻と140種以上の海岸動物が確認されたとのこと。これは磯の潮間帯だけの種数ですので、もっと深いところとか、砂浜や河口干潟などを含めると、もっと多くの種類の海岸生物がいるということになります。

 私たちに磯観察について教えてくださった池辺先生は、このフィールドでの観察を何十年も前から続けられています。私たちの観察会にもその下見にもいつもお付き合いくださり、初めてのスタッフには基本的な説明を何度でも繰り返してくださいます。

 城ヶ崎はなんばから電車で90分、駅から徒歩で30分と、けっこう遠いです。岬町などにも磯はあるので、そっちにしておこうかと思うことも多いですが、それでも頑張って遠出する価値があるくらい1日中楽しめます。また、潮が引いて干上がる部分の面積は広く、以前は定員100人で実施したこともありましたが、最近は40人くらいで実施しています。

 どんな生き物がいるかというと、カニ、ヤドカリ、エビ、フジツボ、イソギンチャク、カイメン、ヒトデ、ウニ、ナマコ、ゴカイ、カサガイ、ヒザラガイ、アメフラシ、ウミウシ、タコ、ヒラムシ・・・これ全部、ほぼ確実に見つけられ、さわれるんです。名前は知っていたけれど、実物を見たのは生まれて初めて、という参加者がほとんどですが、大阪から日帰りでいけるところでそんな体験ができるということで、どなたにもとても満足していただけています。

 私たちも、何度行っても、行くたびに新しい発見があり、1年に1回くらいは行きたいね、ということで、今回も城ヶ崎での開催となりました。とにかく春の海辺の気持ちのいいこと。波の音を聞きながら、ぼーっと海を眺めるだけでも、ずいぶんリフレッシュできることと思いますよ。

 2011416日に開催します。申込締切も近づいていますので、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
http://www.nature.or.jp/events/2011/gyouji201104.htm
私の一番好きな生き物「アメフラシ」をひとりでも多くの人に見せてあげたい気持ちです。ぜひ一度ご参加ください。

2011年3月23日水曜日

堺2区観察会は雨で中止

2区生物共生型護岸での初めての自然観察会は雨で中止でした。いつもながら、中止の判断にはものすごくエネルギーが要ります。中止と決めてから雨があがったらどうしよう、なんて悩んだりして、まるで子どもみたいです。

それでも、生きものがどのくらいいるのか、潮がどのくらい引いているのか、いろいろ確かめたくて、ボランティアスタッフ有志で現場へ行きました。到着したのは11時。観察会ではすでに干潟におりて生き物さがしをしているタイミングでしたが、なんとまだ干潟は水面の下。これでは一般の人におりてみようとは、なかなか言いづらい・・・。

よく考えるとここは大和川の河口。昨日から降り続いた雨は、奈良盆地一帯からここを目指して集まってきているのでした。同じ日に大和川下流の河川敷で自然観察会をしていたまっちゃんが、水位がいつもよりかなり高くなっていたと教えてくれました。

その後、みるみるうちに水位は下がり、予定通りの状況になっていきましたが、本番の観察会で慌てるところでした。そういうことも想定しておかなくてはならないと今更ながら気づきました。

もうひとつの誤算と言えば、ヤドカリがあまり見つからなかったことです。前に来た時はけっこうたくさんいたので高をくくっていたのですが、今回は3匹。この日のために本多さんが作ってくれた「ヤドカリレース場」での世界初のヤドカリレースの出走は2匹でした。1匹は走る気なし、もう1匹が断トツでゴール。これは盛り上がります。実際には、観察会の参加者に走りの速そうなヤドカリを見つけてきてもらい、競争させる予定です。きっと、堺2区の名物イベントになること間違いなしです。・・・そのためにも、ヤドカリがもっとたくさん見つかるようにならないとね。

ただ、不安材料は、この海岸には今のところ「巻き貝」がほとんどいないことです。ヤドカリたちは、最初に運んできた砂に混ざっていた貝殻を使って生活しています。貝殻が供給されないと、ヤドカリは増えるどころか減っていくでしょう。イシダタミガイやイボニシなど、ヤドカリが好きそうな巻き貝がすみつき始めるのはいつのことでしょうか。こうして、いろいろな生きものたちが、他の生きもののおかげで生きることができる、ということを再確認したのでした。
 
本多さんはもう一つ仕掛けを作ってくださいました。竹ぼうきの先を切り落として水につけておくと、エビが集まるというのです!2日前に仕掛けたワナを引き上げて、ジャバジャバと洗うと・・・ヨコエビとその仲間がたくさんと、カニの子どもが5匹ついていました。エビは残念ながら採れませんでした。これは、いろいろな時期に、いろいろな地域で同じ実験をすることで、環境を定量的に調べようとするものです。観察会では、楽しむばかりではなく、環境を調べたりすることも大切なのですね。

そうこうしているうちにどんどん潮は引いてゆき、3段ある干潟の1段目の水がほとんどなくなろうとしていました。「カレイの赤ちゃん発見!」逃げ場がなくなって、体長3cmくらいのカレイが取り残され始めたのです。ボラみたいな魚の赤ちゃんとともに、全員で救出作戦を開始しました。ボラ?はたくさん、カレイは約15匹を救出しました。

カレイの赤ちゃんは砂と同じ色で、ほんとに見つけにくいです。こちらは助けてやろうとしているのに、保護色で見えません。もちろん、カレイたちは私たちにつかまらないようにじっと身を潜めているのです…。でも、カレイの赤ちゃん、ほんとにかわいくて、彼らも「堺2区のアイドル」候補No.1というところです。

ここは「生物共生型護岸」として作られており、魚たちが取り残されてしまう構造は砂の流失を防ぐためには仕方ないのですが、毎日2回潮が引くたびに魚たちが取り残されてしまうというのはなんともやりきれないなあ・・・と言っていたら、「それを食べるために野鳥が集まってくるからそれもまた共生では?」なんて言っている人も。いろいろな見方があります。

この日の最干潮は1350分。13時の時点で3段目の干潟まで降りられる状態になり、ずいぶん広く感じました。ただ、深いところにもそれほど変わった生き物は見つけられませんでした。

今回もう一つうれしいことは、参加申し込みをされていた方の中に、一緒にボランティア活動をしたいと言ってくれる方がおられたことです。彼は、「まちづくり」の勉強をされており、数ある観察会の中から、これを選んで参加してくださったようです。そう・・・この活動も「まちづくり」なんだと思います。

観察会は514日(土)に延期することに。65日(日)には「大阪湾生き物一斉調査」をここで行います。この海岸の愛称も募集する予定です。ぜひ、ヤドカリレース&カレイの赤ちゃんに会いに、たくさんの人に来ていただければと思います。

2011年3月10日木曜日

松が丘小学校ビオトープ池のかいぼり

明石市立高齢者大学校あかねが丘学園というのがあり、2002年から景観園芸コースの授業をいくつか受け持っています。花壇の手入れや栽培の勉強をされているおじいさん、おばあさんたちに、自然観察のこと、子どもたちへの教育プログラムのことを実習してもらっています。

自然観察と景観園芸には「溝」があります。自然のありよう、より自然な状態に価値を感じる「自然観察」と、自然に手を加えること、いかに思い通りにするか、に価値を感じる「景観園芸」は、まさに正反対と感じることも多いです。この学園では卒業後はボランティアとして活動していけるようにカリキュラムが組まれているのですが、実際の卒業後の活動はすべて「花壇作り」などの園芸の領域でした。

そこで、最近4年くらい、ビオトープのことを授業に入れてきました。ビオトープは、自然のありようを大切にしつつ、自然に手を加える方法を考えるという点で、「溝」を埋めるテーマです。園芸とビオトープ作りは、「植物を植える」という点が共通しているので、少しは興味を持ってくださる方が、ちらほら出てきました。

ビオトープ管理士という資格があります。計画管理士と施工管理士の2種類がありますが、作る方ばっかりで、いかに使うかという視点が足りないような気がしています。いわば「ビオトープ活用管理士」というような専門家を養成すべきだと思っています。それはすなわち、ビオトープを使った環境学習を推進するインタープリターやファシリテーターの養成です。いまや、たくさんの学校にビオトープ池ができていますが、担当の熱心な先生の異動などにより、放置されているような例も多いと聞きます。地域のボランティアグループが、学校の先生と協力し、学校ビオトープの管理と活用を推進する仕組みも必要だと考えてました。

私はあかねが丘学園で、シニアによる「ビオトープ活用管理士」を養成しようと考えました。2年前には、あかねが丘学園の構内に教育用ビオトープ池を作ろうと計画しましたが、お金が足りず断念しました。それで今回、あかねが丘学園の近隣の松が丘小学校の池のかいぼりを、あかねが丘学園の生徒さんが実施することをあかねが丘学園と松が丘小学校の両者に提案し、何とか実現しました。

松が丘小学校との何度かの打ち合わせで、いまあるコイの池をビオトープ池に変更するということで承諾を得ました。これまで小動物や水草を食べつくしていたコイと、外来種であるアカミミガメ、それからヒメダカを搬出し、明石の在来の生物を搬入することにも納得してもらいました。最大の難問であった搬出先には某水族園との話がうまくいき、引き取っていただくことができました。

前置きが長くなりましたが、3月8日は、松が丘の小学3年生約70名と先生方、あかねが丘のおじいさん約20名、それから私たち保全協会の4名が力を合わせて松が丘小学校のコイの池のかいぼりをしました。あかねが丘の皆さんも準備万端の大活躍で、これをきっかけに松が丘小学校のビオトープ池を使ったイベントを継続的に実施していく自主活動グループが発足しました。

水は冷たかったですが、子どもたちは靴のままどろんこになり、メダカの救出にいそしんでいました。私自身は泥の中からミズカマキリを発見し、感激しました。他にはマツモムシやクロスジギンヤンマ、ミズムシがいましたが、ミズカマキリは珍しいと言われ、うれしかったです。子どもの頃は図鑑でしか見たことがなく、大学の時に水族館で実物を見ました。野生のミズカマキリを見たのは初めてで、松が丘の子どもたちはうらやましいなあと思いました。

いろいろ課題もありますが、ようやく「ビオトープ活用管理士」のボランティア養成において一つの成果をあげることができたと思います。これからの彼らの活躍に期待したいです。

さすがに明石は遠く、何度も足を運ぶのはたいへんです。大阪でもこんな取り組みができたらいいと思います。「ビオトープ活用管理士」が増えて、たくさんの子どもたちがビオトープで貴重な体験や学習をできるようにしていきたいです。

それにしても最近、おじいさんおばあさんの相談に乗ることが多いなあ・・・。

人命救助の感謝状

大阪市水上消防署から「人命救助」の感謝状をいただきました。職場の計6名でいただきました。

先月、会社の前の海に人が落ちたと連絡があり、浮き輪と縄ばしごを持って走りました。もっとたくさんの人が救出に関わっていたので、自分のお手柄という気持ちは全然ないのですが、無事に救出できてよかったと思います。もしも落ちたところを誰も見ていなかったら・・・と思うと、怖いです。

毎日毎日、いろんなことが起こります。人が海に落ちるのも、年に何回もあり、「またか」という感じです。犯罪関係の方がびっくりさせられることが多いですね。時々、悪い人をつかまえたりもします。

落ちた2人(若いカップル)からは、それ以来何の連絡もありません…。それもちょっとびっくりです。

2011年3月5日土曜日

自然観察インストラクター養成講座

私のボランティア活動の原点です。16年前に7ヵ月間に及ぶこの講座を受けて、
・自然の見方が変わりました。
・自然の伝え方が変わりました。
・教育の仕事をすることに決めました。
現在の会社以外の活動(仕事)や様々なネットワークはすべてここから始まりました。

受講後、7年間ほどの間は運営スタッフとして関わりました。もちろん今でもこの講座との関わりは続いており、1月にはこの講座のスタッフ17名の合宿の企画とファシリテーションを担当させていただき、けっこうハードな2日間を過ごしました。

自然観察会を実施するグループで活動するボランティアを養成する講座です。五感で自然を感じることと、生態学的に自然を理解することを大切にし、感動を人に伝え、自然を大切にする気持ちをはぐくみます。

(社)大阪自然環境保全協会という自然保護団体が主催者ですので、自然観察会は自然環境保全を目的とした教育活動と位置付けています。そのためにも、インストラクター個人を養成するだけではなく、インストラクターが集まってボランティアグループを運営していくことを目標としています。このグループは保全協会の地域支部のような存在となり、地元に密着した保全活動をしていくことを推進しています。

これまで20回で481名の修了者を排出し、現在保全協会に属する15の自然観察会グループのほとんどはこの講座の修了者が中心となって活動しています。

今年、21回目の講座の受講生を現在募集中です(314日締切)。ぜひ、大阪周辺の方に、おすすめください。

21 自然観察インストラクター養成講座(3/14締切)
~自然を伝えよう! 身近な人から未来の子どもたちへ~

身近な地域で自然観察会を開く、ボランティアリーダーの育成講座です。
自然の見方など基礎的な講義と体験の後、受講生自身による一般公開の観察会を企画・開催します。
【日 時】201142()1023()/全26
【会 場】大阪府環境情報プラザ他、府下各地。
【対 象】18歳以上で、「身近な自然を守るために何かやりたいと考えている人」
【定 員】25
【参加費】37,000
【申込み】住所、氏名、生年月日、性別(ふりがな)、電話番号を記入し、E-mail等にて下記へ。
【主 催】()大阪自然環境保全協会 インストラクター係
E-mail:instnature.or.jp(@を★に置き換えています)
【詳 細】:http://www.nature.or.jp/h_koza/inst/inst21/index.html
【説明会】3919時・31214時上記会場にて

2011年3月2日水曜日

堺2区生物共生型護岸

堺市の大阪湾岸の埋立地「堺2区」というところに、生物共生型護岸というものが2009年12月に設置されました。たったの90mしかないこの人工海岸に、少しずつ生き物が戻ってきています。

この場所は、大和川の河口にあり、お世辞にもきれいとは言い難いところ。夏場は水は茶色に濁り、ごみの量も想像以上です。でも、海の生き物たちの強いところは、幼生たちが潮の流れに乗ってどんどん流れてくることです。石はあっという間にフジツボに覆われ、汽水域に生息するコウロエンカワヒバリガイやマガキなどの貝類も付着し始めました。人工干潟の砂の中にはまだ目につく生き物はいませんが、砂に混ざっていた貝殻はすでにヤドカリたちが利用しています。

人間にとって汚く感じる水でも、生き物たちにとっては栄養豊富と言えます。ゴミがあろうとなかろうと、生き物が育つためには大したことではありません。ただ、コンクリートや人工的な砂地には、生き物たちが着生しにくく、どうしても単調な生物相になってしまいます。

泉南の方の、水もきれいで生き物も豊富な海岸と比べると、生き物の種類数も多様性もずいぶん見劣りします。でも、都会の中の「生き物はいない汚い海」と思われている場所だからこそ、私たちが自然観察会をする意義があると考えています。濁った水やゴミだらけの海岸でも、こんなにたくさんの生き物たちがすみついているということを知ってもらい、その生き物たちの生活様式は、知れば知るほどおもしろいということに気づいてもらおうと思います。

その近くに住んでいる人たちが、そんな健気な生きものたちに感動し、愛着を持ってもらえたら、きっと海に対する見方が変わると思います。水の濁りもたくさんのゴミも、自分たち人間がもとになっていることを思い出せれば、水の流し方、ゴミの捨て方も変化すると思います。

3月21日(月祝)に、一般公開の自然観察会を初めて実施します。
http://www.nature.or.jp/h_tkan/sakai2ku.htm


この堺2区の生物共生型護岸は、3年間の期限付きの実験施設です。この護岸にどのように生物が戻ってくるかを調査するだけではなく、その海岸で市民が海と触れ合う場をどのように作っていけるかという実験でもあります。この自然観察会に、たくさんの方に参加していただくことが成果となり、生物共生型護岸が各地に広まっていくきっかけになるかもしれません。

川の三面張りが、どんどん自然共生型の川岸に変化しています。海辺も、どんどん変えていきたい。そうして、都会の人が海と触れあえる場所が増え、海の恵みを実感できるような生活が戻ってきたら、いつかその海は「里海」と呼ばれるものになるのだと思います。それが私たちの夢です。

初めての自然観察会がいいお天気に恵まれますように。