2011年6月1日水曜日

スティーブさんのレポート

1ヵ月半もブログが書けなかった理由を書きます。

スティーブ・バン・メーターという名前の先生がいます。ダースベーダーみたいな名前ですが、実際はサンタクロースみたいな真っ白なあごひげのおじいさんです。地球教育(アースエデュケーション)とインタープリティブデザインのワークショップをするために毎年来日されており、環境教育の世界ではまあまあ有名だと思います。

 私はアースエデュケーションの方はいまだに受講できていないのですが、インタープリティブデザイン(IPD)の第1回目のワークショップを2005年に、同じくIPDの実習編を2010年に受講しました。ワークショップは通訳付きで、本も和訳されていないので、ついていくだけでたいへんでした。スティーブさんは正確に翻訳されることにとてもこだわるので、翻訳の作業に時間がかかるのだということでした。

 さてその時に私にも翻訳が手伝えるものなら、、、という話をしていたため、4月にアースエデュケーションの機関誌の翻訳のお手伝いの依頼がありました。ちょうど時間に余裕がありそうな気がしたので、A4でたったの5ページなら、とお引き受けしたのです。それで、この苦難の1ヵ月半がスタートしたのです。

 やり始めて気付きました。翻訳なんて学生時代以来18年ぶりくらいでした。会社では翻訳担当という人がいるので、そんな長い文章を日本語に書き起こすなんて作業はすることがなかったです。英和辞典を開いたのもほぼ18年ぶりくらいだったと思います。

 最初失敗したのはGoogleの翻訳サイトを使ってみたことです。今どきとても便利だなあなんて思いながら、機嫌よく作業を進めていました。ただ、そのやり方だとPCがないと作業できず、通勤の電車でできたら進むのになあと思いながらも辞書が重いというイメージで、PCでの作業にこだわってしまったのです。4分の1ほど進んだところで、作業が進まなくなってしまいました。観察会のボランティアがいろいろと忙しくなってきて、会社もゴールデンウィークで忙しくなったためです。明日から、明日から、と毎日引き延ばすような状態になっていました。

 作業が進まなかった本当の理由は別にあります。訳してみても意味がわからない(つまり翻訳できない)部分がいっぱいあるのです。これは意外でした。書く、聞く、話すは全然できない私ですが、読むだけは自信があったのです。しかも内容は自分の専門分野ともいえる環境教育のことなので、専門用語もわかると思っていました。それがさっぱりなのです。時間がとりにくい、とれても作業が進まない、達成感がない、という悪循環で、何度かあきらめてしまいそうになりました。

 スティーブさんの英語はとても訳しにくいものでした。辞書に載っていなかったり、載っていても「古語」とか書いていたり、暗喩とか、反語とかが満載です。文章の内容が、英語で書かれた自然教育の本の批判だったので、皮肉とかもたっぷりで、しかもその本の内容を知らずに批評を理解しないといけないというとてもハードな状況でもありました。さらに文法的にも「仮定法過去」みたいな、普通使わないだろうというようなのがいっぱい。映画に出てくる固有名詞とかが急に出てきたり、わざと「反対の反対」みたいな言い方をしてみたり・・・と、とにかく翻訳者泣かせな文章だと思いました。(だから依頼されたみたいですが・・・)

 GWがすぎ、観察会もひと段落したころ、2度目の「待ってますコール」をいただき、ようやくスイッチが入りました。とにかく理解しきれずともとにかく最後まで訳を書いてからだと思いなおしました。そこで取り出したのが重たい英和辞典でした。電車の中でやれば少しずつでも進むのです。

 その英和辞典は高校の時から使っていたもので、一度調べた単語には必ず赤い線が引いてあるのです。それで何年も使ってきたので、今では赤い線の引いていないページはほとんどなく、たいていの単語は以前に調べたことがあるのでとても使いやすいのです。でも、今回は、赤線の引いていない単語の多さに驚きました。

 電車の中で重たい辞書を見ながら少しずつ作業が進み始めました。それでようやく一番最後まで読み終えたところで出てきたのがスティーブさんの署名でした。訳文を書き終えて、最後に「スティーブ・バン・メーター」と書いた瞬間に、「あーやっぱりスティーブさんに見せても恥ずかしくない文章にしなくてはいけない。この文章が誤解を与えてスティーブさんが誤解を受けるようなことになってはいけない。」と強く感じました。そしてまた最初から読み直し、書き直し、辞書を引き直し、という作業を2回くらい繰り返すことになりました。

 最後は、どちらかというと力尽きた、という感じになりました。締め切り的にももうこれ以上は延ばせないという気がしたのと、私の英語力では限界であると感じました。正直言って、まだよくわからない部分があります。わからないから、こうだと決めてしまっているところもあります。英文を読んでいる私でもわからないのだから、訳した日本語だけ読んだ人がわかるわけがありません。でも、これ以上は無理だと思い、提出しました。ベテランの方が手直ししてくださることを少し期待しています。

 翻訳というのはとてつもなくたいへんな作業だと思いました。でも、最後の1週間、スティーブさんの名誉のために頑張っていた頃は、ずいぶん楽しんでおり、夜中に何時間でも作業を続けられるようになっていました。ちょうど枝廣さんの翻訳講座の案内があり、とても受講してみたくなりました。ということで、途中後悔して「もう二度とやらない」なんて思っていた割には、今ではまたやってもいいかな、と思っています。

 ただ、やはりこういう重たい仕事を引き受けてしまうと、ブログは書けなくなってしまいました。ボランティアの仕事って勤務時間という概念がないため、そうなってしまうところがあります。今後、そうなってしまわないようになれれば、と思います。

 このスティーブさんの文章は、地球教育研究所日本支部の会員の方しか読むことができないようです。百人くらいでしょうか。その中で、本当に読む人は、何人くらいでしょう。私のこの何十時間という仕事はそういう人のためなのでしょうか。勝手な言い方ですが、今回一番勉強になったのは私で、スティーブさんの言いたいことを一番理解できたのも私だと思います。個人授業を受けたみたいな気分でもあります。

 この文章を読んでみたいという方もおられるかもしれませんが・・・英語で読まれた方がいいと思います。

 ということで、今日からブログを再開します。5月の日付の分も、実際は今日以降に書いたものです。

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