2011年6月29日水曜日

セミ羽化ウォッチングをみんなで!



普及部理事として5年間、いろいろなことを試みたり、いろいろな事情で試みられなかったり、うまくいったり、いかなかったり…。今年、新たな動きが始まっています。

きっかけは「どんぐりまつり」担当の杉本理事の「セミ羽化まつりもやろうや…」の一言。2月の「自然観察会グループ連絡会議」で提案したところ、これまで毎年セミ羽化観察会を続けてきた地域観察会の皆さんからも賛同をいただき、3月にさっそく第1回実行委員会を開催しました。これまでに使われた配布資料や紙芝居がたくさん集まり、アイデアもいっぱい出していただきました。

「その気」になっていただいているのは地域観察会だけではありません。そよごの会や空の会昆虫部会の皆さんも実行委員会に集まってくださり、協会全体的なコラボレーションが進みつつあります。そんな盛り上がりを受け、この事業を35周年記念事業として実施することが理事会で承認されました。

正式名は「みんなでセミ羽化ウォッチングinおおさか」に決まりました。「セミ羽化ウォッチング」と称してセミ羽化観察会を開催していただける地域グループを募ります。共通の小冊子「かんさつノート」を作り、セミ羽化の感動を広めていこうと考えています。ここまでが第一歩。

今回の取り組みの特徴は、大規模な「観察会」だけではなく、個人・家族レベルでの観察を推奨しようとしているところです。そのため、7月中旬には一般向け「セミ羽化講習会」を開催、また個人リーダー向けのテキストも作成して、どうやれば家の近所で自分の周りの人とセミ羽化を観察できるかということも紹介していきます。

そこにこだわったのは、1年前の私自身の体験がベースです。杉本理事が団地でセミ羽化観察をされているという話に触発され、うちの子たちを連れて、初めてうちの近所でセミ羽化観察に成功し、近所のお友達を呼び出して、感動の夜を過ごしました。セミ羽化は大人数で集まる「まつり」というより、少人数で静かに楽しむ雰囲気がぴったりです。「みんなで」というタイトルには、そんな思いが込められています。

セミ羽化は、田舎よりも都会の方が観察しやすいと言えそうです。地域でのセミ羽化観察会が増え、家族的な規模のミニ観察会が増えて、お花見や紅葉狩りのような年中行事になったらいいなあ。大阪ならではの、そんな運動を盛り上げていきたいです。今年の夏からあなたもぜひ!


~ 生命の神秘を感じよう 感動の体験を子どもたちと ~

自然の見方・とらえ方

 シニア自然カレッジというシニア向けの講座があります。よく似た名前のシニア自然大学は有名で、内容も似ているのですが、カレッジは大阪南部が活動の中心です。毎週1回で1年間、山や森や公園などに出かけて自然のこと、生き物のことを学ぶ講座です。今年で6年目になりますが、1年目から毎年第1回目の講座「自然の見方」を受け持っています。

 これまで5年間は5月に第1回が行われていたのですが、今年は4月に変更になりました。いつものところでいつもの生き物が見られないかも、ということでちょっとドキドキしながら、いちおう1時間前から下見をしました。これを見せよう、あれを話そう、こんな風にきいてみようかとか、こんなことをしてもらおうかとか、あれこれ考えながら、とても気持ちのいい散歩の時間をすごしました。
 
 受講生は15人で、親と同じくらいの世代。第1回の講座ということで皆さん緊張気味です。観察の心がまえなどを少し話した後、さっそく野外へ。たまたまそこに生えていたスズメノエンドウの小さな花や豆のさや、葉っぱやツルのつき方をじっくり観察することから始まりました。いつもながら行き当たりばったりですが、なかなか好評でした。

 桜の木の下では、葉桜になったとたん忘れ去られたソメイヨシノの葉っぱを観察。空に透かしてみたら、葉脈がとても美しく、樹木の体を維持する仕組みを話しました。ここでいつもの質問「この葉っぱの原材料は?」・・・「土の中の養分?」「肥料?」「光合成?」・・・私の答えは「空気と水」です。このたくさんの葉っぱが二酸化炭素と水から作られているということを思い出してください。科学技術がいくら発展しても、ただの葉っぱが何億年もやり続けているこの作用を人がすることはできないのですよね。

 毎年一番盛り上がるのはイチョウの花を観察することです。今年はいつもより早かったので、初々しい雄花も見ることができました。60才を過ぎて、生まれて初めてイチョウの花が咲いているのを見たという人がほとんどです。私自身も、25歳の時に初めて見て、その時の体験が今のこの講座につながっています。「身のまわりの生き物たちの移り変わりに気づくこと」は地球の未来のためにとても必要な感性だと思います。

 このあとも公園内をぶらぶら歩きながら、いつもと同じアカマツやクスノキ、アラカシ等を観察しました。1年間の講座では、名前や見分け方など、おそらく知識中心に教える先生方が多いのではないかと予想しています。それはそれで楽しいのですが、そのやり方では先生がいないと楽しめない、ましてや人に伝えるなんて・・・ということになりかねません。自分なりの見方で観察して、自分にとっての発見に価値を見出すことができれば、きっと人にも話したくなります。そんな1年間を過ごしていただきたいと、最初の講義を締めくくりました。

シニア自然カレッジ

2011年6月1日水曜日

スティーブさんのレポート

1ヵ月半もブログが書けなかった理由を書きます。

スティーブ・バン・メーターという名前の先生がいます。ダースベーダーみたいな名前ですが、実際はサンタクロースみたいな真っ白なあごひげのおじいさんです。地球教育(アースエデュケーション)とインタープリティブデザインのワークショップをするために毎年来日されており、環境教育の世界ではまあまあ有名だと思います。

 私はアースエデュケーションの方はいまだに受講できていないのですが、インタープリティブデザイン(IPD)の第1回目のワークショップを2005年に、同じくIPDの実習編を2010年に受講しました。ワークショップは通訳付きで、本も和訳されていないので、ついていくだけでたいへんでした。スティーブさんは正確に翻訳されることにとてもこだわるので、翻訳の作業に時間がかかるのだということでした。

 さてその時に私にも翻訳が手伝えるものなら、、、という話をしていたため、4月にアースエデュケーションの機関誌の翻訳のお手伝いの依頼がありました。ちょうど時間に余裕がありそうな気がしたので、A4でたったの5ページなら、とお引き受けしたのです。それで、この苦難の1ヵ月半がスタートしたのです。

 やり始めて気付きました。翻訳なんて学生時代以来18年ぶりくらいでした。会社では翻訳担当という人がいるので、そんな長い文章を日本語に書き起こすなんて作業はすることがなかったです。英和辞典を開いたのもほぼ18年ぶりくらいだったと思います。

 最初失敗したのはGoogleの翻訳サイトを使ってみたことです。今どきとても便利だなあなんて思いながら、機嫌よく作業を進めていました。ただ、そのやり方だとPCがないと作業できず、通勤の電車でできたら進むのになあと思いながらも辞書が重いというイメージで、PCでの作業にこだわってしまったのです。4分の1ほど進んだところで、作業が進まなくなってしまいました。観察会のボランティアがいろいろと忙しくなってきて、会社もゴールデンウィークで忙しくなったためです。明日から、明日から、と毎日引き延ばすような状態になっていました。

 作業が進まなかった本当の理由は別にあります。訳してみても意味がわからない(つまり翻訳できない)部分がいっぱいあるのです。これは意外でした。書く、聞く、話すは全然できない私ですが、読むだけは自信があったのです。しかも内容は自分の専門分野ともいえる環境教育のことなので、専門用語もわかると思っていました。それがさっぱりなのです。時間がとりにくい、とれても作業が進まない、達成感がない、という悪循環で、何度かあきらめてしまいそうになりました。

 スティーブさんの英語はとても訳しにくいものでした。辞書に載っていなかったり、載っていても「古語」とか書いていたり、暗喩とか、反語とかが満載です。文章の内容が、英語で書かれた自然教育の本の批判だったので、皮肉とかもたっぷりで、しかもその本の内容を知らずに批評を理解しないといけないというとてもハードな状況でもありました。さらに文法的にも「仮定法過去」みたいな、普通使わないだろうというようなのがいっぱい。映画に出てくる固有名詞とかが急に出てきたり、わざと「反対の反対」みたいな言い方をしてみたり・・・と、とにかく翻訳者泣かせな文章だと思いました。(だから依頼されたみたいですが・・・)

 GWがすぎ、観察会もひと段落したころ、2度目の「待ってますコール」をいただき、ようやくスイッチが入りました。とにかく理解しきれずともとにかく最後まで訳を書いてからだと思いなおしました。そこで取り出したのが重たい英和辞典でした。電車の中でやれば少しずつでも進むのです。

 その英和辞典は高校の時から使っていたもので、一度調べた単語には必ず赤い線が引いてあるのです。それで何年も使ってきたので、今では赤い線の引いていないページはほとんどなく、たいていの単語は以前に調べたことがあるのでとても使いやすいのです。でも、今回は、赤線の引いていない単語の多さに驚きました。

 電車の中で重たい辞書を見ながら少しずつ作業が進み始めました。それでようやく一番最後まで読み終えたところで出てきたのがスティーブさんの署名でした。訳文を書き終えて、最後に「スティーブ・バン・メーター」と書いた瞬間に、「あーやっぱりスティーブさんに見せても恥ずかしくない文章にしなくてはいけない。この文章が誤解を与えてスティーブさんが誤解を受けるようなことになってはいけない。」と強く感じました。そしてまた最初から読み直し、書き直し、辞書を引き直し、という作業を2回くらい繰り返すことになりました。

 最後は、どちらかというと力尽きた、という感じになりました。締め切り的にももうこれ以上は延ばせないという気がしたのと、私の英語力では限界であると感じました。正直言って、まだよくわからない部分があります。わからないから、こうだと決めてしまっているところもあります。英文を読んでいる私でもわからないのだから、訳した日本語だけ読んだ人がわかるわけがありません。でも、これ以上は無理だと思い、提出しました。ベテランの方が手直ししてくださることを少し期待しています。

 翻訳というのはとてつもなくたいへんな作業だと思いました。でも、最後の1週間、スティーブさんの名誉のために頑張っていた頃は、ずいぶん楽しんでおり、夜中に何時間でも作業を続けられるようになっていました。ちょうど枝廣さんの翻訳講座の案内があり、とても受講してみたくなりました。ということで、途中後悔して「もう二度とやらない」なんて思っていた割には、今ではまたやってもいいかな、と思っています。

 ただ、やはりこういう重たい仕事を引き受けてしまうと、ブログは書けなくなってしまいました。ボランティアの仕事って勤務時間という概念がないため、そうなってしまうところがあります。今後、そうなってしまわないようになれれば、と思います。

 このスティーブさんの文章は、地球教育研究所日本支部の会員の方しか読むことができないようです。百人くらいでしょうか。その中で、本当に読む人は、何人くらいでしょう。私のこの何十時間という仕事はそういう人のためなのでしょうか。勝手な言い方ですが、今回一番勉強になったのは私で、スティーブさんの言いたいことを一番理解できたのも私だと思います。個人授業を受けたみたいな気分でもあります。

 この文章を読んでみたいという方もおられるかもしれませんが・・・英語で読まれた方がいいと思います。

 ということで、今日からブログを再開します。5月の日付の分も、実際は今日以降に書いたものです。